膝の痛み
間違った膝の曲げ方していませんか?
膝の痛み、実は『骨盤の傾き』が原因かも。
正しいしゃがみ・スクワットで痛みを解消!
この記事では、膝の痛みの原因として「骨盤の傾き」に着目し、正しいしゃがみやスクワットの方法を紹介しています。まずは膝の痛みの一般的な原因について説明し、その後、膝に負担をかけない正しい動作と、間違った動作を比較します。さらに、骨盤の傾きを改善するためのエクササイズを提案し、最終的には膝への負担を軽減するための総合的なアプローチを示します。
目次
1.膝の痛みについて
代表的な膝の病名と症状
膝の痛みにはさまざまな要因が考えられます。
代表的な病名としては、『変形性膝関節症』、『半月板損傷』、『オスグッド病』などがあります。この他にも、数多くの膝の病気や症状が存在しています。
診断はお医者さんでないとできませんので、まずは膝の状態をしっかり確認することが大切です。
“膝関節の症状 ・変形性膝関節症 · 半月(板)損傷 · 膝靱帯損傷 · 膝離断性骨軟骨炎 · オスグッド病”
引用:膝関節の症状一覧|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/body/knee.html
膝の状態を確認する重要性
しかし、多くの患者さんが病名や症状を確認しても、その後のリハビリがうまくいっていないのではないかと感じています。
病名や症状に関する情報は当院のホームページだけでなく、多くの場所から得ることができます。
ここでは、『動作から考える膝へのストレス軽減』について考えてみましょう。
ただし、標準的な骨格を持つ方のしゃがみ動作について説明しますので、すべての人に当てはまるわけではありません。
たとえば、手術などでおこる脚の長さの違い(脚長差)や、大腿骨や脛骨のねじれ(前捻角や脛骨の内捻・外捻など)の程度など、個々の違いがあります。
そのため、この情報を参考にして、今よりもしゃがみ動作が楽になりそうだと思った方は、専門知識を持った病院や治療院、整骨院、接骨院などでの診察をお勧めします。
2.スクワット動作・膝の曲げ方の悪い例・良い例
一般的に、スクワットやしゃがむ動作をする際に「膝を前に出さないように」と指導されたことがあると思います。これは正しい指導です。特定の目的で意図的に膝を出す場合もありますが、ほとんどの場合、膝は前に出しすぎない方が良いでしょう。
膝に負担をかけないためには、膝から曲げるのではなく、股関節から曲げるようにしましょう。股関節が曲がることで、自然に膝も曲がり、理想的な動きが促されます。
“スクワットを正しく行うには、以下の4つのポイントを意識しましょう。
引用:スクワットの効果とは?鍛えられる部位や効果的なやり方、回数を解説 |株式会社デサント
・ 膝がつま先よりも前に出ないようにする“
https://www.descente.co.jp/media/sports/training/26135/
膝を前に出さない動作の重要性
では、なぜ膝を前に出さないようにする必要があるのでしょうか?
実際に試してみましょう。
- 立った状態から、膝が自分の足より前に出るように曲げてみてください。膝周辺が張ってきたり、疲れたりするのがわかると思います。膝が痛い方は、痛みが増すかもしれません。これは、重心から膝関節が遠くなることで負担が増えるためです。
- 立った状態から、頭の位置はずらさずにお尻を後ろに引くように膝を曲げてみてください。今度は股関節(お尻)周辺が張ってくるのがわかると思います。これも、重心から股関節が遠くなることによるものです。
さて、①と②を比べたとき、どちらが膝に負担がかかるかを実感してみましょう。
多くの方は、①の方が膝に負担がかかったと感じたのではないでしょうか。これにより、膝を前に出さないしゃがみ方の方が膝に負担をかけにくいことがわかります。
このような関節への力のかかり方を「関節モーメント」といいます。関節モーメントについては、以下の記事を読むと理解しやすいでしょう。
“ところが膝を前に突き出す曲げ方だと、回転軸と重心の距離は伸びる。
引用・出典:理想のスクワット 膝曲げだけはNG 「股関節」意識 | 日本経済新聞
15センチメートルだとすると大腿四頭筋にかかるのは150キログラム。
一般的な体力の人だと筋肉の支えが足りず、関節に大きな負担がかかってしまう。”
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO19605230T00C17A8W10601
ここまでの内容はネット上でも多く見かけますが、ここからが本当に大事な内容です。
具体的に膝を前に出さないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?
特に、膝が痛い方やしゃがむ動作が気になる方は、股関節(お尻)を後ろに突き出すスクワットが苦手かもしれません。
3.どうすれば良い例になるのか?『骨盤の傾き』とは?
股関節(お尻)を後ろに突き出すスクワットができない人は、『骨盤が後傾』している可能性があります。ですから、『骨盤を前傾』にすることで、股関節を後ろに突き出しやすくなり、しゃがみ動作が楽になったり、スクワットも効果的に行えるようになります。
まずは、骨盤の前傾・後傾を確認しましょう。
骨盤の前傾・後傾の確認方法
骨盤前傾・後傾
骨盤前傾
骨盤が前に傾いている状態です。立った状態だと、自然に股関節が屈曲(太腿を上げる動き)しやすくなります。
骨盤後傾
骨盤が後ろに傾いている状態です。立った状態だと、自然に股関節が伸展(太腿を後ろに上げる動き)しやすくなります。
正しい骨盤の傾きを促す重要性
骨盤前傾の状態では、スタートの時点でお尻を後ろに突き出しやすいポジションにあります。一方、骨盤後傾の状態では、お尻を引こうとしても骨盤前傾のポジションまで移動できないため、自然と膝が前に押し出される動きになってしまいます。
また、普段から骨盤後傾で生活している方は、股関節の横の部分(大腿筋膜張筋など)が筋の遠心性収縮や皮膚の張力によって硬くなっている可能性があります。また、それに伴い中殿筋などの臀部の筋力低下が起こっている可能性もあります。そのため、骨盤を前傾にするのが容易ではなくなります。
では、実際にお尻を後ろに突き出してスクワットや膝を曲げる動きができなかった人は、次のエクササイズを試してみましょう。
4.『骨盤後傾』を少なくするエクササイズ!
椅子を使った簡単なエクササイズ
椅子に座ったまま、股関節から身体を前に曲げていきます。簡単ですね。
- 足を肩幅よりやや広く開きます。手は親指を前にして腰に添えます。
- 腰から曲がらないように、股関節からおへそを前に突き出すイメージで曲げていきます。
- 上半身はリラックスして、腰から上は曲がらないようにしましょう。
- これ以上股関節が曲がらない位置まで来たら、5秒キープします。
5秒間キープを5回、3セット行います。YouTubeでエクササイズ動画を確認しながら行ってください。
エクササイズ後の効果の確認
では、このエクササイズをした後に同じように、スクワットや膝を曲げてみましょう。先ほどよりお尻が後ろに突き出しやすく、膝が前に出にくくなりませんか?
膝に痛みがある方は、多少痛みが軽減していると思います。
この骨盤前傾を促すエクササイズは、あくまでも一例です。他にも、『股関節の可動範囲を広げるエクササイズ』や『臀部を鍛えるヒップリフト』なども効果的です。
5.しゃがみ・スクワット・膝を曲げる動作のまとめ
しゃがみやスクワットの動作において、「骨盤の傾き」がなぜ大事なのか、ご理解いただけたでしょうか?
良い動きと悪い動きの比較
○ 良い動き
骨盤前傾 → 股関節屈曲(お尻が後ろに引ける) → 膝がつま先より前に出ずに膝が曲がる → 膝に負担がかかりにくい
✖ 悪い動き
骨盤後傾 → 股関節伸展(お尻が後ろに引けない) → 膝がつま先より前に出る → 膝に負担がかかりやすい
骨盤の傾きが重要な理由
しゃがみやスクワットの動作では、膝が内側に入らないようにすることや、母趾球に重心を乗せることなど、意識すべきポイントがたくさんあります。その中でも『骨盤の傾き』は非常に重要な要素です。
身体的特徴に応じた適切な動作の提案
また、人それぞれ身体的な特徴がありますので、一般的なスクワットやしゃがみ動作がうまくいかない場合もあります。例えば、大腿骨の前捻角が小さい人や脛骨の外捻が顕著な人は、わざとつま先を外に向けてスクワットをした方が良い場合もあります。
いかがだったでしょうか?この記事の内容に少しでも興味を持っていただき、膝の痛みを少しでも緩和したいと考えるきっかけになれば嬉しいです。
お近くで膝の痛みにお困りの方は、ぜひご来院ください。
また、遠方の方は専門知識を持った『病院、治療院、整骨院・接骨院』を受診してみてください。
参考文献
- 山本澄子、石井慎一郎、江原義弘. 基礎バイオメカニクス 第2版. 医歯薬出版株式会社, 2010
姿勢(静的アライメント)や歩行・動作(動的アライメント)の評価を通じて、骨・関節・筋肉にどのようなストレスがかかっているかを把握しながら施術を行っています。
このページは、一般の方向けに作成しているページです。身体の痛みや病態について、理解し役立てて頂くことを目的としています。
医療従事者など専門的な方がご覧になり、誤った情報がある場合は加筆・修正を加えますのでこちらにご連絡いただければ助かります。
少しでも皆様のお役に立てていただければ幸いです。