腰痛
筋性の腰痛を克服!
屈むと痛い・片方だけ痛い腰痛に効くストレッチと正しい座り方。
クッション・コルセット活用術
この記事では、筋性の腰痛に対する対処法や正しい姿勢について詳しく解説しています。筋性の腰痛の原因には、骨盤後傾や骨盤回旋による筋肉の遠心性収縮が関わっていると考えられています。効果的な座り方・寝方、クッションやコルセットの使用方法も詳しく説明しています。最後に、腰痛のタイプ別の対処法を再確認し、非特異的腰痛に対する全般的な対処法をまとめています。
目次
1.腰痛について
腰痛の原因とその特定の難しさ
腰痛の85%は原因不明とも言われています。しかし、本当にそうなのでしょうか? 実際のところ、原因を特定しにくいだけであって、何らかの原因が必ず存在しています。
“しかし原因を特定できる腰痛は全体の約15%です。残りの約85%は原因を特定しにくい非特異的腰痛で、一般に腰痛症や坐骨神経痛などと診断されます。”
引用・出典:腰痛の危険度セルフチェック。原因や症状、対処法・治療の注意点 | NHK
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_510.html
多くの患者さんは、異常がないから湿布を貼って安静にしてくださいと言われた経験があると思います。これは、画像診断や血液検査などでは異常が特定できなかったという意味であり、異常がないわけではありません。 では、画像診断や血液検査で異常が確認できなかった腰痛を、どのように特定していくのでしょうか?
もちろん今回の記事で100%特定できるわけではありませんが、筋筋膜性腰痛に焦点を当てて考えていきます。
2.筋性の腰痛に対する考え方~骨盤後傾・骨盤回旋から考える~
遠心性収縮と急性腰痛・慢性腰痛
筋肉による腰痛は、多くの場合、筋肉が引っ張られながら力を発揮する「遠心性収縮」によるものと考えられます。
“筋肉の収縮タイプは大別し3つに分類されます。筋肉の収縮方向と関節運動が同じ方向となる求心性収縮、筋肉は収縮しているが関節運動は生じない等尺性収縮、筋肉の収縮方向と関節運動が反対方向となる遠心性収縮があります。“
引用・出典:動作時における筋収縮が遠心性収縮優位となることが … | 埼玉県立大学
https://www.spu.ac.jp/tabid600.html?itemid=1379&dispmid=1828
この収縮が急激に起こり筋肉を炎症させた場合が急性腰痛(ぎっくり腰)、長時間引っ張られることで血液循環が悪くなり凝り(筋硬結)になったものが慢性腰痛と考えられています。
日本整形外科学会のHPには筋筋膜性腰痛についての明言はありませんが、「筋性 急性腰痛」や「筋性 慢性腰痛」と検索すると、整形外科のHPなどで筋筋膜性腰痛の状態を確認することができます。
急性と慢性の違いはありますが、力の加わり方など腰痛が起こる過程は同じです。以下の説明が当てはまる場合は、参考にしてください。
骨盤後傾の確認と影響
前にかがむと痛い(骨盤後傾)
筋性の腰痛の多くは「骨盤後傾」が原因と考えられます。まずは骨盤の前傾・後傾を確認してみましょう。
骨盤後傾だと腰が丸くなります。通常、腰椎は前弯していますが、骨盤が後傾すると腰椎は後弯してしまい、腰部の筋肉が常に引っ張られ、遠心性収縮が起こりやすい状況になります。
骨盤後傾・腰部後弯で前に屈んでみましょう。
この姿勢では腰がより丸くなり、腰にストレスがかかりやすくなります。前に屈む動作の時には腰部も適度に後弯しますが、前屈時に腰痛が出やすい方は、普段の姿勢から骨盤後傾している可能性があり、腰部の後弯が起こりやすいのです。
骨盤回旋の確認と影響
左側・右側、片方だけが痛い(骨盤回旋)
片方だけの腰痛の場合、大きな要素として骨盤の回旋が考えられます。以下の方法で確認してみましょう。
1.その場で足踏みをして、肩幅ぐらいの間隔で足を止めます。
2、足元から左右に身体を捻じってみましょう。
どちらの方が向きやすいですか?
向きやすかった方と反対側に腰痛がありませんか?(左を向きやすかったら「右」、右を向きやすかったら「左」)
骨盤の回旋に差がある方は、真っすぐに立っている状態でもすでに回旋している可能性があります。例えば、右に腰痛があり左を向きやすい場合、骨盤は左回旋しています。この状態では、右腰の筋肉(腰方形筋など)が外側に引っ張られ、痛みが生じます。
さらに、骨盤の回旋が大きいと臀部の筋肉がうまく使えず、骨盤後傾になりやすいです。結果として、骨盤後傾・左回旋(右前方回旋)となり、片側だけに筋性の腰痛になる可能性が生じるのです(筋だけではなくその隙間にある神経の痛みとも考えられています)
3.後傾・回旋に対する腰痛治療について
筋筋膜性腰痛の治療・施術
筋筋膜性の腰痛に対してどのような治療や施術を行えば良いのでしょうか?
もちろん、筋筋膜性の腰痛と言っても、同じ施術で効果が出るとは限りません。問診や歩行、姿勢のアライメントを診て、その方に合ったアプローチ方法を様々な角度から考えます。
例えば、スウェーバック姿勢やフラットバック姿勢も骨盤後傾が原因であると考えられますが、スウェーバックなら股関節前面のストレッチ、フラットバックなら脊柱のエクササイズから考えるなど、アプローチは様々です。また、歩行や足のアライメントから、前足部内反で距骨下関節の回内代償が顕著に出る場合など(過剰回内)は、距骨のリリースから行うこともあります。
このようなことを確認し、私たちセラピスト(施術者)は施術を行っています。
エクササイズ
ここでは、多くの方に当てはまりやすいアプローチ方法をご紹介します。筋筋膜性の腰痛で『前にかがむと痛い』や『左側・右側、片方だけが痛い』場合、ほとんどが骨盤後傾していると思われます。
骨盤が後傾している場合、ハムストリングス(腿の後面にある筋肉)が硬くなります。ハムストリングスは骨盤の座骨からふくらはぎの骨(脛骨、腓骨)についています。
骨盤が後傾しているためにハムストリングスが硬くなるとも言えますし、ハムストリングスが硬いので骨盤が後傾しているとも言えます。
そのため、ハムストリングスを柔らかくすることが重要です。
片側だけの腰痛の場合、痛みが出ている側のハムストリングスが特に硬くなっていることが多いです。次のストレッチを行い、左右の硬さを確認してみましょう。この動作でハムストリングスの硬さが確認できたら、ストレッチを続けてみてください。
腰が曲がらないように、股関節からしっかりと曲げて、背伸びをするような形で優しく行いましょう。1日5秒×5回を3セット行います。
これを繰り返すことで、前かがみの動作などの痛みが軽減するでしょう。さらに、再発防止のために筋力トレーニングを行うことも必要ですが、ここではリハビリの一例として提示しておきます。
4.座り方・寝方の姿勢について (ソファー・マットレス)
多くの患者さんから質問を受ける内容ですので、参考にしてください。
座り方
筋性の腰痛に対しては、骨盤を立てて座ることが有効である可能性が高いといえます。骨盤が後傾すると、腰部の筋肉が引き延ばされ、遠心性収縮が起こりやすくなります。そのため、ダイニングチェアなどの硬い椅子をお勧めします。
ソファーは座面が低かったり柔らかかったりするため、骨盤後傾を助長する可能性があり、お勧めしません。
床に座る場合は、正座もしくはあぐらで骨盤を立てるように気を付けましょう。
座るときはイスに深く腰かけ、両足を地面につけて、背中を伸ばしましょう。胸を張って肩と頭を少し後ろに引きます。こうすると骨盤が垂直に立ち、背筋がまっすぐ伸びた美しい座り方になります。”
引用:腰痛になりにくい姿勢【肩こり・腰痛の予防のための注意点】 | エーザイ株式会社
https://www.eisai.jp/articles/lumbago/sl_points04
腰痛予防の座り方として背筋を伸ばすことが大事とされていますが、これは骨盤後傾による筋肉の遠心性収縮を避けるためだと考えられます。
寝方
横向きになって寝ることをお勧めします。
腰椎は「屈曲50° 伸展35° 側屈20° 回旋5°」の可動域があり、前後に大きな可動性を持っています。
仰向けやうつ伏せで寝ると腰椎の可動性が大きくなりすぎる可能性があります。横向きで寝ることで余分な可動性を軽減できます。
こちらの記事には、写真付きで腰の可動範囲の解説があります。
腰痛や肩こりの根本的な原因は背骨の運動不足 ~背骨は動かせる角度が決まっています~ | フャミリードクター
https://www.family-dr.jp/?column=21481
横向きに寝る際は、一般的に両膝を曲げるように説明されますが、私のおすすめは下側の脚を伸ばすことです。両足を曲げると骨盤が後傾しやすくなります。
上側の脚を曲げ、クッションなどで支えましょう。クッションがないと脚が床に接地し、骨盤の回旋が起こる可能性があります。
また、柔らかいソファーなどの上で寝るのは避けましょう。不安定性が助長される可能性があります。
5.クッション・コルセットについて
クッションの使い方
筋性の腰痛の場合、柔らかいクッションを座面に敷くのはお勧めしません。代わりに、硬めのクッションやバスタオルを使いましょう。写真のように、骨盤を立てた後に後ろに支えとして挟んでください。
また、あぐらで床に座る場合は、お尻の下に厚めで硬いクッションや座布団を入れましょう。これで骨盤を立てやすくなります。
コルセットの使い方
コルセットには様々なタイプがありますが、今回は骨盤の後傾を防ぐための方法を紹介します。
骨盤の上部(出っ張っている部分)がコルセットの真ん中に来るように当てます。
息を吸ってしっかりお腹をへこませます。
適度な強さで留めます。
出来るだけお腹をへこませて腹圧をかけてください。これが腹筋の代わりになります。患者さんの中には、コルセットを巻いて来院される方がいますが、腹圧をかけずにただ巻いているケースが多いです。それではただの腹巻になってしまうので、気を付けましょう。
以上の方法を実践することで、腰痛の軽減に役立つことを期待しています。
6.筋筋膜性腰痛のまとめ
各対処法の再確認
なぜ、前かがみになった時や片側だけに腰の痛みが出るのか、理解いただけましたでしょうか?
- 前かがみによる腰痛 : 骨盤後傾による筋肉の遠心性収縮
- 片側だけが痛い腰痛 : 骨盤の回旋可動範囲による筋肉の遠心性収縮
- 座り方 : 骨盤を立てて座る
- 寝方 : 横向きになり、片足を曲げて間にクッションを入れる
- クッションの位置 : 椅子(骨盤の後ろに入れる)、あぐら(お尻の下に入れる)
- コルセットの使い方 : お腹をへこませてしっかり締める
腰痛治療に対する提案
冒頭で触れたように、原因が特定できない非特異的腰痛は全体の85%を占めると考えられています。これは、多くの人が対処法に困っていることを意味しており、そのためにこのページを作成しました。
腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアでも、同様の対応が有効な場合がありますが、まずはお医者さんの診断を受けることが重要です。ここで紹介したのは、原因がはっきりしない非特異的腰痛、特に筋筋膜性腰痛に対する対処法や考え方です。
この記事の内容が少しでも皆さんのお役に立てて頂ければ幸いです。今回の対処法は一時的なものであり、腰痛を軽減し再発を防ぐためには、筋力トレーニングが効果的です。
お近くで腰痛にお困りの方は、ぜひご来院ください。
遠方の方は、専門の知識を持った『病院、治療院、整骨・接骨院』を受診してください。
姿勢(静的アライメント)や歩行・動作(動的アライメント)の評価を通じて、骨・関節・筋肉にどのようなストレスがかかっているかを把握しながら施術を行っています。
このページは、一般の方向けに作成しているページです。身体の痛みや病態について、理解し役立てて頂くことを目的としています。
医療従事者など専門的な方がご覧になり、誤った情報がある場合は加筆・修正を加えますのでこちらにご連絡いただければ助かります。
少しでも皆様のお役に立てていただければ幸いです。